算数得意化プロジェクト
算数が得意になりたいと願うすべての子どもたちのために…

 分数の計算を得意にしたい…
  分数の四則(+−×÷)や、その混合計算ができるようになるかどうかは、将来数学が苦手にならないために非常に大切です。実際には私立中学受験でもしない限り、小学校の間に複雑な計算をする機会はほとんどないのですが、できればこれにチャレンジして欲しい。

 複雑な計算を工夫をして、より簡単に解く努力をすることこそが「数学における思考力」を育成するのに大きな役割を果たしていると考えているからです。そのために分数というのは欠かすことのできない、非常に便利な道具だからです。特に私立中学の受験を志す場合などは、いかに分数を抵抗なく自由自在に、もっと言わせてもらえれば華麗に使いこなすことができるかが、入試の第一関門になるといってもよいでしょう。

 分数を使いこなせるということは、約分と通分が自由自在にできるということとほとんど同じことです。通分ができればたし算やひき算はできますし、約分ができればかけ算やわり算でも苦労しません。この他に帯分数−仮分数、分数−小数の変換が自由にできれば、かなりレベルの高い計算もできるようになると思います。

 ところが、この約分と通分というのがなかなかやっかいで、これを自在に使いこなせるようになるためには、連除法の訓練がある程度できていないといけないんです。これがわかっている先生ほど連除法に時間をかけて十分練習をさせているのではないかと思います。実際に最近話題のある計算プリントでも、この部分にはかなりのページが割かれています。

連除法って何だろう

 連除法ってなんだっけ、という人のために一応説明しておくと、下のように、たとえば30と42であれば、両方とも2で割れるので、2で割って15と21にします。15と21は両方とも3で割れるので、3で割って5と7にします。5と7の両方を割り切ることができる整数は1だけなのでここで止めます。

 こうして出てきた数字のうち、2×3=6が30と42の最大公約数になり、2×3×5×7=210が30と42の最小公倍数になる。といったように最大公約数と最小公倍数を同時に求める技が連除法です。



 ここでやっている、両方を2で割り、その後3で割るといった作業がまさに約分そのものですし、いろいろな本でよく紹介されている通分の技にもこれは使います。

 ところで、連除法を自由に使うためには、まず30と42が両方とも2で割れること、15と21が両方とも3で割れることに気づく必要があります。もちろん30と42をいきなり6で割ってももちろんOKです。
 そんなの簡単だから大丈夫という人にはここから先はあんまり必要ありません。読み飛ばしても大丈夫です。ちょっと自信がないという人は読んでみて下さい。

割り切れる数(約数)の見つけ方
 10,20,30,40,50,…のように10で割り切れる数にはある共通の特徴があります。わかりますか?そうです。1の位が全て0ですね。これはきっと皆さんもきづいていたでしょう。知らなかった人は覚えておきましょう。

 5、10,15,20、25,…のように5で割り切れる数にも共通の特徴があります。1の位が1か5のどちらかですね。覚えておきましょう。

 2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,…のように2で割り切れる数の特徴はなんですか?1の位が2,4,6,8,0のどれかですね。これも覚えておきましょう。

 ここまでは1の位だけ見ればよいので、一瞬でチェックできますね。

 12,15,18,21,24,27…のように3で割り切れる数の特徴はわかりますか。これが自分で発見できる小学生がいたらかなりすごい!
 実はこれらの数はすべて1の位と10の位の和が3の倍数になっているのです。12→1+2=3とか18=1+8=9とか。321みたいに3けたの数字は3+2+1を計算してみます。答えは6ですからこれも3で割り切れます。3で割り切れる数はこのようにチェックします。「各位の数字の和が3の倍数になる」といった書き方がしてあるテキストが多いようです。

 このほかにも4とか6とか8とか9とかで割り切れる数のチェック方法もありますが、覚えてもあんまりいいことがないのでここでは説明しないことにします。

 連除法や約分がすらすらできるようであれば全く問題ないのですが、中には当然のようにこれを苦手にする生徒もいます。そんな生徒に対して、「そんなものはわり算の練習不足だ!」の一言でかたづけてしまうのは簡単ですが、もう少し効率よくできるようにする方法はないのでしょうか。

約分や連除法が楽になるチェックの順番

 連除法や約分がすらすらできるようになるためには、何で割り切れるかの判別方法を覚えて練習してなれることですが、それでもなかなか上達しない場合にははチェックの順番を覚えるといいと思います。
 実際に私が問題を解くときのチェックの順番は、
 10→5→2→3→7→11→13→17→19→23→以後素数が続く…です。

 まず真っ先に10で割れるかどうかをチェックする。これは1の位が0かどうかを見るだけなので一瞬でできます。約分をする場合には分子と分母の0を同じ数ずつ消すだけなのでこれもすぐ終わります。

 次に5で割れるかどうかをチェックします。1の位が0か5なのでこれも一瞬でできますね。5で約分できたら、もう一度5で割れるかどうかチェック。5で割れなくなるまで繰り返します。

 3番目に2で割れるかどうかのチェック。1の位が0,2,4,6,8のいずれかなので少し時間はかかりますが、かかると言ってもチェックは1秒くらいでできるでしょう。割れるようだったら割っといて、これも割れなくなるまで繰り返します。

 4番目には3で割れるかどうかのチェックです。これは各位の数字を全部足す必要があるのでちょっと時間がかかるかも…。といっても実際に約分や連除法で使うのはせいぜい3けたの数字ですから、まあ数秒でかたがつくと思います。

 なんかここまでは順番がばらばらだと思うかもしれませんが、ここまではあくまでもスピード重視です。ここから先は基本的には小さい数字から割れるかどうかを確かめていきます。

 といっても、4はチェックする必要がないのです。その理由はわかりますか?ここまでの過程ですでに2で割れるかどうかのチェックは終わっていて、割れるのであればすでに割ってあります。ということはここまで生き残った数字のペアは2で割り切ることのできないペアなんですね。2で割れないものが4で割れるわけがないじゃないですか。同じような理由で6とか8とか9とか12とか…チェックする必要のない数字だらけです。「4とか6とか8とか9とかで割り切れる数のチェック方法もありますが、覚えてもあんまりいいことがない」と書いたのはこのような理由からです。

 あとは2でも3でも5でも割れない数字でチェックしていけばよいのです。1とその数以外に割り切れる数字のない数のことを素数(そすう)といいますが、このあと出てくる7→11→13→17→19→23→は全て素数です。てか5も2も3も、10以外は全部素数ですね。基本的には小さい素数でチェックすればいいのです。ただし7以上の数については10や5や2や3のときみたいに、簡単にチェックする方法がないか、あってもけっこう面倒くさいかどっちかなので、ここから先は実際に割ってみないと割れるかどうかがわかりません。

 実際にこの方法を使ってみると10からチェックがはじまって、11以上までやらないといけないケースはほとんどありません。13はたまに見ますが、17とか19とか23とかで約分する必要があるケースは本当にレアです。

 連除法とか約分といわれた瞬間にパタッと止まってしまう生徒がいますが、それはこのようなチェックの順番を知らないから、まず何から始めていいかわからないから止まるのです。知らないなら覚えれば(教えれば)いいだけのこと。慣れてくれば自分独自のチェック方法を思いつくかもしれませんが、まず慣れるまでは10→5→2→3→7→11→13→17→19→23→の順序でチェックしてみてはどうでしょうか。このチェック順については教えている先生はあんまりいないみたいですが。教えてあげると困っている生徒は楽になるのになあっていつも思っています。

 連除法と最大公約数、最小公倍数は毎日少しずつでもいいので、できれば毎日練習して得意になりましょう。これについては市販のテキストにも十分な量がのっているものがちょくちょくあるので、ここで新たに作成しなくてもよいと思います。10→5→2→3→7→11→13→17→19→23→の順序のチェック方法が身に付いていることと、2けた割る1けたとかの計算が十分練習できていればここでつまずくことはないと思います。

 連除法の練習プリントはこちらに作成してあります。よかったら利用して下さい。



通分について

 ここからいよいよ通分の話になります。通分というのは2つ(以上)の分母の異なる分数の分母をそろえる技で、異分母のたし算、ひき算をするときや、分母の異なる2つ(以上)の分数の大きさを比べるのに必要になります。

 これから紹介する連除法を利用した方法はいろいろな本にに良く紹介されている方法なのであらためてふれておかなくてもいいかなと思いながら、でも知らないと話にならないので一応説明しておきます。
 下の計算の場合まず分母の6と10で連除法を行います。

 そこで出てきた3を1と10に、5を1と6に、クロスするようにかけると、自動的に通分できちゃうという技です。



 十分なれてくれば、別にこの技を使わなくても通分できるようになりますが、まだ慣れていない時点では非常に有効で機能的な方法だと思います。通分できたらたし算(またはひき算)を行い、この結果が約分できるようであれば約分をして完了です。実際にここで約分できる問題はけっこうレアです。私にはそれが大いに不満なのですが、現実に市販の問題集を見るとだいたいそうなっています。

 この時点で連除法の練習が十分できていないと、けっこうたいへんです。この方法を使わないということになると、6と10の最小公倍数を探すことになるのですが、そもそも連除法ができない生徒に最小公倍数を探すことは困難なので、「とりあえず6と10とかけて分子は60」ってやる生徒の何と多いことか…。

 とりあえず分母同士をかけて通分するという方法には致命的な欠点が2つあります。まずなにより数が大きくなって計算が面倒くさくなるということです。計算が面倒くさくなれば、そもそも計算の苦手な生徒はかなりの高確率で間違えますし、1問解くのに時間がかかって、他の勉強をしたり遊んだりする時間がなくなります。

 次に、6と10のように1以外の公約数があって、最小公倍数が単純に6×10=60にならない計算を、「分母同士をかけちゃう法」でやってしまうと、100%の確率で最後に約分が発生します。そもそも連除法が苦手な生徒が約分が得意なわけがありません。またまたここで間違える可能性がアップしてしまいます…。

 それよりもなによりも最も私がおそれることは「同じ計算ならできるだけ簡単に、楽に、素早くすます方法を工夫する」といった、算数の勉強をする事によって身に付くはずの大切な学力が身に付かなくなってしまうということです。これは、将来算数(数学)が得意な生徒を育成するといった視点から見ると、致命的な事態なんです。だから、これを読んでいるあなたが、生徒であれば絶対やってはいけません。もしもこれを読んでいるあなたが生徒を指導する立場の人間(お父さん、お母さんや先生)であるなら、絶対してはいけない指導法なのです。

 「すごく難しく見える計算だったのに、工夫したら簡単にできた♪」という喜びこそ、算数を勉強する醍醐味ですし、そういった工夫を重ねて将来「非常に困難な問題がおきても、様々な工夫によって解決できる」人間に育って欲しいと思います。連除法の訓練を積むことは、子どもたちには遠回りに思えるようです。「連除法なんて知らなくたって、分母同士かけちゃえばいいじゃん」と考える子どもは、非常に多い。かなり真面目な子どもでもそう考えます。でも連除法を使ったこの方法は実は一番の近道なんですね。

異分母+−計算プリントの必要性

 「分母同士をかけちゃう法」を身につけてしまう子どもを一人でも減らすために私はこの時点での問題集は、全て先ほどの6と10のように分母が同じ約数を持つもの(単純にかけた答えが最小公倍数にならないもの)であることが望ましいと考えています。なんなら「分母同士をかけちゃう法」を使うと計算がとんでもないことになっちゃって、とても解けなくなっちゃう問題ばかりでもいいかと思います。いろいろな問題を解いてみるとなかには分母同士をかけると最小公倍数になる問題もたくさんありますが、そのときは先ほどの例の連除法で2になっているところが1になるだけの話なので、べつにこの方法を使っても損をすることは全くありません。

 そして、もうひとつつけ加えるならば、最後の約分を忘れる子どもが非常に多い。これに対して「しっかり確認しろ!」なんて言ってもできるようにはなりません。約分できないのはある意味当たり前のことなのです。

 だって、連除法を利用した通分がしっかり使いこなせれば、最後に約分が出てくる問題が非常にレアなのですから。だから、子どもにとって約分なんてしなくていいのが日常なのです。

 でも、少ないとはいえ最後に約分が発生する問題がある以上「じゃあ約分なんてしなくてもいいよ」って言えませんよね。この問題を解決するにはどうすればよいのか。よい方法があります。日頃子どもに練習させる問題を全て「連除法を利用すればを使えばかなり楽になるけど、それでも必ず最後に約分しないと正解にならない」問題にしちゃえばいいのです。そうすれば、最後に約分することが当たり前になって、この作業を忘れることがなくなると考えています。日頃から、そんな問題ばっかといていても、学校のテストなんか受けると約分できない問題が圧倒的に多いのですが、そのときは「ああ、約分できない問題もあるんだ」って思ってくれればいいだけの話です。

 ところがこの「連除法を利用すれば楽になるけど、それでも必ず最後に約分しないと正解にならない」問題ばかりがずら〜っと並んだ問題集がなかなかない。誰かが作っていそうで、ありそうで、でも見つからない。だから作りました。「連除法を利用すればかなり楽になるけど、それでも必ず最後に約分しないと正解にならない」って問題はレアはレアですが、本気で探せば100や200は見つかります。1000でも2000でもあることはあるのですが、あんまり通分したときの分母が大きくなりすぎると生徒が大変なので、手頃なところを200問ほどピックアップして、並べかえをして何度もつかえるようにしました。よろしかったら使ってみて下さい。

 

 ちなみに「連除法を利用すれば楽になるけど、それでも必ず最後に約分しないと正解にならない」タイプの問題の場合、実は何で約分すればよいかはあらかじめわかっているのです。



上の計算例であればそれは連除法のときにでてきた「2」です。この例では通分した結果分母は30になりますが、この30は2×3×5で計算したものです。ですからたし算を計算した結果約分できる可能性のある数字は2か3か5(またはその約数)であることがわかっています。

 そして問題に出てくる分数が既約分数(すでに約分してあってこれ以上約分できない分数)であれば、実は3や5では決して約分できないことは広く知られています(って本当かな)。だから約分できるとしたら2(ここに6のような数字が入る場合は、6またはその約数)しかないのです。

 中2以上で数学の得意な生徒であれば証明も可能かと思いますので、できればチャレンジしてみて下さい。これを知っていれば、たし算、ひき算の結果の約分もかなり楽になります。

 もしも問題にまだ約分できる分数が使われている場合には、3や5でも約分できる場合もありますが、そんな変な問題はまず通分する前に約分をすませておくとよいと思います。

 
分数のかけ算、わり算

ここまでで連除法がしっかり身に付いていて、約分がすらすらできるようであれば分数のかけ算、割り算が苦手になることはないはずです。ここで気をつけることは3つくらいしかありません。

 帯分数はかけ算、わり算に使えないので必ず仮分数にしてから計算する。

 かけ算はそのまま分母同士、分子同士をかける。わり算はわる数(うしろ)の分子と分母をひっくり返してから(逆数にしてから)かける。

 約分できる場合は必ず計算の途中で約分する。約分は必ず分子と分母で行うことになっているので(決して分子同士や、分母同士で約分してはいけません)、問題に使われている分数が既約分数(すでに約分してあってこれ以上約分できない分数)であれば、約分は斜め同士でしかできません。

例えば、