算数得意化プロジェクト
算数が得意になりたいと願うすべての子どもたちのために…

 計算力とは? 〜大人向け〜

 ここ何年か計算力の育成がブームになって「百ます計算」に取り組む学校も増えてきました。確かに素早く正確に計算できることは、算数の学力を向上させるために絶対に必要な要素のひとつです。ですから、私も毎日計算の練習をすることには大賛成です。

 素早く正確に計算できればもちろんテストのときに有利ですし、宿題も早く終わります。同じ時間勉強してもたくさんの問題を解くことができます。

 素早く正確な計算が文章題を得意にする

 ある単元を学習した後、子どもはその単元の問題を解くことになります。問題を解いた後に答え合わせをして、その単元が理解できたかどうかの確認をします。
 ここで、取り組んだ問題のほとんどが正解であれば子どもにとって大きな自信になります。「わかった」「できるようになった」という実感が子どもを成長させ、学習意欲を高めます。
 そこで私たち教員は、生徒全員がここで正解できるよう一生懸命指導します。答え合わせのときに教室に響く、ボールペンがノートに円を描くときのあのすがすがしい音。答え合わせが終わった後の生徒の「全部できたよ!」って笑顔。そんなときには本当に先生をしていてよかったなあと思います。

 ところが素早く計算ができないと時間内に問題を解ききることができません。正確に計算ができないと、立式が正しくても正解になりません。正答数が少なければ「わかった」という実感を子どもが感じることができないのです。たとえ、立式が正確にできていて理解度が高くても、採点の結果×ばっかりだと、子どもはきちんと理解できたのかどうか不安になります。そしてどんどん自信をなくし、学習意欲も低下します。

 計算練習が育む生きるための学力

 ただ単に計算を素早く正確にこなすだけだったら、毎日計算練習をするよりも電卓を使った方が早い。そう考える生徒が多いのも事実です。しかしそれでも毎日計算練習をする必要はあるのです。

 計算練習を行うということは、言い換えれば、『ある作業を決められた手順に従って正確に行う』訓練をするということにほかならないと考えるからです。そしてこの『ある作業を決められた手順に従って正確に行う』能力は私たちが生きていくのに絶対必要な能力ではないでしょうか。

 たとえば自動車の運転がそうです。バックでしか出られないところに駐車して、出るときに手順を間違えてギアをドライブに入れた状態でアクセルを踏み込んでしまったら大変なことになります。
 この『ある作業を決められた手順に従って正確に行う』能力は、生活の様々な場面で必要となります。工場で機械を操作するとき、お料理をするとき、パソコンを立ち上げて色々なホームーページを閲覧するとき…。
 自動車を運転したり、料理をしたり、パソコンを使ったり。私たちが毎日こういった作業を普通に行えるのも、小学生のときに取り組んだ計算練習のおかげかもしれません。

 よりレベルの高い計算問題に挑戦させよう

 けたの多い計算→小数の計算→分数の計算…、学年が進むにつれ計算もより高度で複雑になります。中学入試を考えるのであれば、小数・分数の混合計算や複雑な逆算などもっと高度な計算にもチャレンジすることになります。私は中学入試を考えていない小学生でも、できるのであれば中学入試レベルの計算問題にチャレンジした方がよいと考えています。中学入試用の計算問題集は市販のものがたくさんあるので、早めに分数の四則まで教えてできるようになったら取り組ませるようにするとよいと思います。

 飛行機を操縦したことはありませんが、飛行機の操縦がオートマチック車の運転と比べはるかに複雑で正確な操作を要求されることは容易に想像できます。『ある作業を決められた手順に従って正確に行う』能力が高くなければパイロットにはなれません。パイロットに限ったことではありませんが、より高度で複雑な機械を正確に操作できる能力があれば、職業選択の幅は大きく広がる。そう考えています。より高いレベルの計算にチャレンジすることがそれを可能にします。

 毎日少しずつが効果的

 そうはいっても1日1時間も計算練習をする必要はありません。1日3〜10分程度を毎日やれば計算力は確実に向上すると思います。このくらいの時間であれば、子どもにもそれほど負担にならないと思います。毎日時間を決めて確実に練習する習慣をつけるよう心がけましょう。